お知らせ
年末は、12月29日(土)まで通常どおり営業致します。
年始は、1月4日(金)から通常どおり営業致します。
12月30日~1月3日は休業致します。
よろしくお願い申し上げます。
ご相談に来られた方の中には、「実は既にとある弁護士に頼んでいるのですが、どうもいまひとつ・・・」といった感じで切り出されるお客様もいらっしゃいます。
当事務所としてはもちろん、そのようなご相談をしていただいて構いません(医療過誤と特許と税務訴訟以外であれば)。
弁護士としては当然、プロとして自信を持ってその方針で進めておられるでしょうが、少し離れた視点から客観的に見ると、別の方針もあり得るのではないか、と思われることもあります。これは、示談交渉かADRか調停か訴訟etcか、といった大局的な方針(いわばハード面)のみならず、相手方との交渉態度や主張内容等の個別具体の方針(いわばソフト面)にもかかわるものです。
依頼してみたものの、「どうも合わないな」と思われた場合は、病気の場合と同じでセカンドオピニオンを求めるというのも一つの方法だと思います。それによって、「やっぱり今の方針のままで良かったんだ」と安心することもできるでしょうし、逆に思い切って弁護士を変えるきっかけにもなることもあるでしょう。
なお、セカンドオピニオンを求められた場合に、既に依頼されている弁護士に当職が連絡を取って報告するということは絶対にありませんのでご安心下さい(その弁護士が当職の知り合いや同期であっても全く同様です)。もちろん、ご自身で弁護士に解任を言い出しにくいということであれば、当職が代わりに解任を通知することは可能です。
準備書面の作成が終わって少し時間ができたので、強制執行について書きます。
以前のコラムで、「勝訴判決を得ることが訴訟のメインの目的」と書きましたが、判決をもらったからといって直ちにどこかからお金が出てくるわけではありません。
当然ながら、国(裁判所)がお金を出してくれることもありません。お金を支払うのは被告(反訴が認容されれば原告も)です。被告の親の財産も子の財産も当てにすることはできません。
勝訴判決が確定した後のお金の回収は、まずは被告の自発的な支払に委ねられ、多くの場合は訴訟の結果を受け入れて支払ってくれます。
ただ、そうスムーズに進まないこともそれなりにあります。感情的に「絶対払いたくない」と意固地になっている場合や、そもそも支払うお金が十分でない場合です。
養育費の回収を例に取ると、支払義務者が会社員で勤続年数も長く、退職金の関係でもそう簡単に転職することはないと思われるケースでは、回収に困ることはないです。
サラリーマンや公務員であれば、給料の差押などされたくないし、信用に傷がつくことを嫌がるためです。当職の経験でも、義務者がサラリーマン等の場合に給料の差押をしたことはほとんどありません。大抵は任意に支払ってくれます。
他方、義務者が転職を繰り返したり、そもそも勤務先がわからないという場合は、かなりの難航が予想されます。
3大メガバンク+ゆうちょ銀行であれば、全国の支店から義務者の口座を照会して残高を回答してくれますが、給料の振込先口座がどこの金融機関か不明である場合には虱潰しで23条照会をかけるしかありません(しかもその23条照会1回当たり約五千円+αがかかります)。
金融機関によっては、債務名義(確定判決等のことです)のある23条照会の場合には、過去数ヶ月間の取引履歴を開示してくれて、そこから勤務先会社がわかるということもありますが、給料が現金手渡しの場合にはこの調査は奏功しません。源泉徴収者(=給与支払者)や市・都道府県民税特別徴収者が誰であるかを税務署・市区町村役所が回答してくれればいいのですが、債務名義があっても現在のところ税務署等は回答してくれません。
なお、細かい話ですが、強制執行しようとする場合、原則として義務者(債務者)の住所がわかってないといけないので、住所不明の場合にもひと苦労することになります。
以上のように、たとえ勝訴判決を得たとしても、権利実現まで苦労するということは全然珍しくはないです。
人間的にも経済的にも信用できる相手とだけ法律行為(契約や結婚や養子縁組等)を行うことで自衛するというのも一つの選択肢かも知れません。
弁護士の中核的な職務の一つとして、訴訟活動があります。
訴訟活動において弁護士が何をしているかについて、少し解説します(もしかしたら以前同じようなことを書いたかも知れませんが)
まず、言うまでもありませんが、勝訴判決(被告側なら請求棄却判決)を得ることが訴訟における原則的な目標です。「原則的な」というのは、事案によっては少々無理筋の場合になんとか和解に持ち込みたいという戦略もあり得るためです(但、あくまで例外的なものです)。
そして、その目標のために弁護士が何をするのかというと、メインは「事実」の「立証」です。
たまに誤解されている方もおられますが、法廷で相手方本人または代理人(もしくは裁判官)と口喧嘩して言い負かすのではありません。その意味で、一般の方が思われている「口が達者」というのは、弁護士の能力とは特に何も関係がないと言えるでしょう。和解の協議を詰めるにあたって、相手方を説得できる理屈を直ちに考える必要が生じる場面はありますが、それも当然、法的に納得しうる理論(理屈)に基づかないと意味がありません。
少し脇道にそれましたが、上記にいう「事実」とは真実という意味ではありません。「自分が裁判所に認めて欲しい事実」という程度に捉えてもらえば結構です。ですので、訴訟提起に至るまでの経緯を長々と書き連ねる必要もなければ、必要のない事実や相手方を利する事実をわざわざ言う必要もありません。
そして、民事訴訟には「当事者が主張しない事実を判決の基礎にしてはならない」という原理があるため、原告被告がある事実について共に勘違いをしている場合、原則として裁判所は間違いを正さないというのが建前です(現実にはかなり口出ししますが…)。
例えば、ある出来事が起こった日付につき原告被告双方が勘違いをしているが証拠上は正しい日付が顕れているという場合であっても、裁判所としては双方が勘違いしているその日付で事実認定をせざるを得ないということです。そのような意味で、民事訴訟においては、真実を追究するという機能や目的は後退するわけです。
また、請求を認めてもらうためにはどのような事実を立証すべきかということは法律上決まっています。そのため、法律上必要ではない事実についていくら立証しても、結論には何の影響もないばかりか、訴訟解決まで無駄に時間を要することになりかねません。訴訟の中で、「相手方がこんな酷いことを言ってきたから、こちらも倍にして言い返したい!」という気になるのはもっともですが、法律上の関連性がない限りそのような主張はやめておいた方が賢明です。
何を主張して、何を主張すべきでないかという判断(舵取り)をするのも、弁護士の重要な役割の一つです。
次に立証の話ですが、これは世間で思われているよりもそのハードルは高いと考えていただいた方がよいです。
ざっくり言えば、「誰もがその事実が存在したと確信できるだけの証拠」が必要です。「そういう事実があったかも知れない」という程度では全然足りません。
たとえ依頼者の記憶にある「真実」が確信に満ちたものであっても、それを支える証拠がないと、残念ながら裁判所を納得させることはできません。
逆の立場から見たら、被告は勝訴判決によって自分の財産を差押・強制執行され得るのですから、上記のような高いハードルはむしろ当然のことと言えるでしょう。
なお、手持ちの証拠だけでは必ずしも十分ではないものの、裁判所を通じてしかるべきところから文書等を出してもらえば立証が可能、という場合もあるため、証拠がないからといって最初から諦める必要もありません。弁護士が代理人として任意に文書提出をお願いしても出してもらえないが、裁判所からの要請だと結構すんなり出してくれる、という場合は少なくありません。もちろん、各官庁や会社等によって保管期限があるでしょうから、なるべく早く動いた方がいいのはもちろんです。
以上、タイトルとの関連性が薄い雑多な内容を書きましたが、時間があれば強制執行(権利の実現)について書きたいと思います。