お知らせ
吹田商工会議所発行の「すいた商工会議所ニュース」7月号に、弊所の紹介と弁護士權藤のインタビュー記事が掲載されました。
弊所は個人のお客様が多いですが、法人・事業主のお客様も一定数おられ、企業法務にも力を入れております。
一口に企業法務と言っても、人事を含む労働問題、債権回収、不正競争行為、経営権に関する紛争、事業承継、組織再編、知的財産権、業務委託やフランチャイズ、もしくは債務整理に至るまで、様々な法律問題があります。
病気と同じで、早期発見と早期の対策がなによりも重要ですので、お気軽にご相談ください。
最近、闇営業と反社会的勢力との関係が取り沙汰される中で、本筋とは関係ない話ですが、思ったことを書き留めます。
(読んでも特段面白くはありません)
よく吉本所属の芸人さんが「俺らと吉本の間に契約はない。契約書なんか作ってないから。」というのを耳にします。
ただ、本当に「契約がない」のかと問われると、弁護士を含む多くの法律家は「必ずしもそうではない。」と答えるでしょう。
もちろん、日本の法律上は、という限定付きであって、外国法では異なる場合もあります。
契約という概念は、大雑把に言い換えると、「権利変動を目的とした意思表示の合致」です。
「これを○○円で売りたい」という意思と「それを○○円で買いたい」という意思が合致し、表示されたことが、すなわち契約の成立です。
意思の表示は、口頭であるか書面によるか、あるいは黙示であるかを問いません。
これにより、売主は物を引き渡す義務が、買主は代金を支払う義務が、それぞれ発生します(権利変動)。
ここにおいて、契約「書」の作成は何ら契約の成立要件とはなっていません。
もちろん、契約の種類によっては書面の作成が成立要件となっているものもありますが、ほとんどの種類の契約はそうではありません。
吉本と芸人さんの間の契約が労働契約なのか、準委任契約なのか、請負契約なのか、業務委託契約なのかは不明ですが、いずれの契約においても契約書の作成は成立要件とはなっていません。
(ただ、例えば労働契約については、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。(労働契約法6条)」とされているものの、「労働者及び使用者は、労働契約の内容(括弧内省略)について、できる限り書面により確認するものとする。(同法4条2項)」とされており、書面作成が望ましいことは間違いありません。)
そのため、「契約書がない」ことがすなわち「契約がない」ことを意味しない、という結論になるのです。
ちなみに(もしかしたら以前同じ事を書いたかも知れませんが)、たまに相談の際に質問される事項で、「この契約書は有効ですか?」というのがあります。
しかし、法律家としては、契約「書」が有効か否かではなくて、「契約」自体が有効か否かを考えます。
それは、契約書はあくまで契約内容を証する書面であって、契約の有効要件ではないためです。
契約の内容である意思表示に何らかの瑕疵があるか、そもそも意思表示自体なかったのか、あるいは後発的な解除事由があるか、などを検討して、契約(または解除)の有効無効を判断するのが、法律家の思考です。
なお、契約書とは異なりますが、遺言はそのひと単独での意思表示であって、独立した法律行為ですが、遺言「書」には厳格な有効要件があります。
最近の法改正で若干緩和されたものの、依然として民法(及び最高裁)は遺言書の成立要件について厳格です。
遺言については、また日を改めて書きます。