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ごんどう
法律事務所

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お知らせ

2019-11-21 13:27:00

離婚と別居は切り離せない問題です。

何らかの事情で離婚後も一緒に住み続けるという特殊な場合を除き、一般的には離婚後は実生活上も他人に戻るためです。

ただ、別居の持つ意味というのは事案によって様々であり、例えば「離婚するのに必要な別居期間」のような形で一般化するのには本来的に馴染まないものです。

現に、裁判所においても、何年程度の別居期間があれば離婚を認める、というような基準があるわけではありませんし、別居も離婚請求を認容するか否かを判断する際の一つの要素という位置付けです。

そのため、離婚と別居(期間)の問題については場合を分けて考える必要がありますし、結局のところ「事案による」かつ「他の事情と合わせての総合判断になる」程度のことしか言えないわけです。

 

とはいえ、インターネット上で離婚に関する情報を探している方(弁護士に相談する前の方)にとっては、上記程度の解説では何の役にも立たないでしょう。

そこで、参考までにいくつか場合分けをして別居の持つ意味につき少し説明します。

 

1 どちらにも決定的な責任がない場合

 価値観の相違からすれ違いが増えて別居した場合もあれば、どちらが悪いとも言えない小さな夫婦喧嘩が積み重なって別居に至った場合や、舅姑からのいびりに耐えられなくなって別居した場合もあるでしょう。これらの場合、どちらか一方に不仲についての責任があるとは言えないと思われます。

 そして、ある程度別居した後、すでに気持ちは他人同士になってしまい、今後の人生を考えた場合に離婚したいと考えるのは自然なことでしょう。

 このように、別居以外には特に「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとはいえない場合には、数年程度の別居期間がある事案で裁判所の判断が分かれています。

 もっとも、通常は別居期間のみで判断されることはなく、その前の同居期間との比較で、別居期間が長期に及んでいるか否かが判断されます。同居期間が半年であれば、別居が2年といえども長いでしょうし、同居期間が30年であれば同じ2年の別居でも短いという判断も当然あり得ます。

 その他、別居の事実以外で、婚姻関係の破綻を基礎づける事情として、離婚意思の強固さ(関係修復可能性がない)も意味を持ちます。例えば、別居以降会うこともなく、連絡も事務的なことだけで、子供との面会交流の際も同席しない等といった事情は、離婚請求を認容する方向に働くでしょう。

 

2 どちらかに有責性がある場合

 有責性とは平たく言えば、法定離婚原因(民法770条1項1・2・5号)に該当する事実を作り出したこと、です。

 典型例は不貞行為(1号)であり、5号に該当する典型例としては暴力があります。

 これらの言わば被害者側が離婚請求する場合には、別居の有無や長短は問題になりません。法定離婚原因それ自体で離婚請求が認容されるためです(もちろんそれらが立証できれば、の話ですが)。

 別居期間が問題となるのは、加害者側が離婚請求する場合です。

 最高裁判例を引用すると長くなるので、裁判所のHP(http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1)で最高裁大法廷昭和62年9月2日判決・民集41巻6号1423頁を検索してください。他にも同第一小法廷平成2年11月8日判決・裁判集民事161号203頁、同第三小法廷平成6年2月8日判決・裁判集民事171号417頁、同第一小法廷平成16年11月18日判決・裁判集民事215号617頁あたりが大いに参考になります。

 大局的に見れば、裁判所に有責配偶者からの離婚請求を認めてもらうためのハードルは徐々に下がってきています。

 前期平成2年最高裁判決の認容事案では約8年でしたが、下級審レベルでは別居期間が5年未満であっても離婚請求を認容している事案があります。

 とはいえ、最終的には最初に述べたとおり「総合判断」であるため、別居期間のみに着目するのは危険です。有責配偶者からの離婚請求を認容した裁判例においては、別居中の生活費を遅滞なく送金していたり、子供が成人または高校卒業程度に達していたり、他方配偶者にそれなりに収入があったり、他方配偶者にも婚姻関係破綻につき責任がないとはいえなかったり、様々な周辺事情があります。要するに、離婚を認めても法的正義の観点から問題が無いと言える場合でなければならないのです。

 

3 有責性まではないが、非難されるべき事情がある場合

 上記1と2の中間に位置するケース、すなわち、それ単独では法定離婚原因とはならないものの、一方配偶者に社会通念上非難されるべき事情があるケースについては、更に個別性が強まります。

 暴言や強迫に至らないまでもモラルハラスメントがあったり、舅姑のいびりに加担したり、他方配偶者の親族と不和を生じさせたり、家庭内で他方配偶者を無視したり、浪費を繰り返したり等、様々な事情が考えられます。

 それ自体では離婚原因として主張するには弱い事実であっても、別居との合わせ技で、離婚請求を認容してもらう方策が考えられます。そのような場合、上記1で述べたような数年の別居期間が未だ経っていなくても、裁判所としては婚姻関係の破綻を認定しやすくなります。

 

 

 なお、時折ご相談に来られた方から、「離婚したいのですが別居した方がいいでしょうか」と聞かれることがあります。

 相談者の属性に左右されるため一概には言えませんが、あえて言うならば「離婚の意思が強固であれば、別居はした方がいい」となるでしょう(※事情によっては「今は別居しない方がいい」という回答もあり得ます)。離婚を決意するからには理由があるはずで、それが耐えられないからこそ、弁護士に相談に来られているのだと思います。

 また、裁判所にも、同居できている=少なくとも夫婦関係は完全には破綻していない、と捉えられがちです。

 

 どのような事案であっても、なぜ離婚したいのか、その責任がどちらにあるのか、等について証拠に基づいて説得的に主張していく必要がありますし、その点が弁護士の腕の見せ所でもあります。

 素人判断で変な方向に突き進むよりも、一度弁護士に相談するのが最善の策です。きっとインターネット上で収集するよりも、事案に即した有益なアドバイスが得られるはずです。


2019-11-16 14:22:00

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