お知らせ
もしかしたら以前どこかで書いたかも知れませんが、当事務所は比較的家事事件の依頼を受けることが多く、調停制度について質問されることも多いので、少し説明します。
離婚関係や遺産分割については、家事調停事件として家庭裁判所で話し合いをすることが予定されています。
法律上は、調停ではなく審判(裁判所が判決のような形で判断を示す)を求めることも可能ですが、実際は審判を申し立てたとしてもほぼ100%調停に付されてしまいます。
さて、家事調停については、「裁判所での話し合い」と説明されることが多く、私のだいたいそのように説明するのですが、ここでは順を追ってもう少し詳しく説明します。
①まず、管轄のある家庭裁判所に調停の申立書を提出しなければ、事件は始まりません。
申立書は共通の書式が家庭裁判所に備え置かれていますので、窓口にもらいに行くとよいでしょう。
その時間がない場合は、裁判所のホームページで書式をダウンロードして申立書を作成しても良いです。
申立書と一緒に郵便切手を納めないといけませんが、必要な枚数等は裁判所によって異なったり、改訂されたりするので、電話で聞くのが一番早いです。
②申立書を提出してしばらく(早ければ1週間程度)すると、裁判所から第1回期日調整の電話がかかってきます。
裁判所のスケジュールの空き次第ですが、だいたい申立書提出から早くても1ヶ月後の日が候補日となります。
ちなみに、裁判所は第1回期日を決めてから相手方に申立書の写しを送るので、相手方の都合は聞きません。
③先ほど、「裁判所での話し合い」と書きましたが、もちろん、当事者が面と向かって話し合うことはありません。
裁判所が選任した調停委員という壮年の男女ペア(同性の場合もあります)が、当事者から事情を聞き取ります。
大阪家庭裁判所には、(数えたことはありませんが)数十室の調停室があり、見た感じだいたい10畳くらいの広さです。
その部屋に、申立人と相手方が交互に入り、調停委員と話をします。
午前に期日指定されたらだいたい10時から12時頃まで、午後に指定されたらだいたい13時30分から長引けば16時30分頃まで、調停が行われます。
なお、当事者の身内の方は、待合室には入れますが、裁判所の許可がない限り調停室には入れません。
④「調停って何回くらいするんですか?」と聞かれることがありますが、事案によるとしか言えません。
調停で長々と期日を重ねるより、調停成立見込みがないのであれば早々に次の手段に移った方が、依頼者にとって(私にとっても)利益となることが多いため、通常は極力少ない回数で処理できるよう努めています。
家庭裁判所からの呼出状を見て相手方が慌てて和解の申し出をしてきたような場合であれば、第1回期日前に調停条項案を作成して裁判所に上申し、初回期日で調停成立することもあります。
それ以外の場合でも、例えば婚姻費用と養育費についてはいわゆる相場のようなものがあるため、調停委員会の説得により、次回期日までに受諾の可否を考えてきてもらい、2回目3回目くらいの期日で調停成立することも少なくないです。
反面、財産分与や遺産分割や面会交流等については、目安となる指標があるわけではなく、当事者の意見が先鋭に対立することが多いため、なかなか数回の期日で終わることは稀でしょう。
とはいえ、いずれの事件も調停不成立の場合には審判移行する事件類型ですので、無駄に調停期日を費やしている場合には、審判移行を求めるのも一つの方法です。
⑤最後に、調停が成立したら、裁判所が調停調書を作成します。
この調書には確定判決と同じ効力があり(家事事件手続法268条1項)、要するに相手方が約束を守らない場合には強制執行ができるのです。
これが、わざわざ裁判所で話し合いを行う主たる理由です。
⑥なお、離婚調停の場合には、調停不成立の場合には離婚訴訟により解決するほかありません。
(一応、審判離婚という制度があるにはありますが、ほとんど使われていません。)
というが概略ですが、細かいことを書くととても紙幅が足りないので、家庭関係の事柄でお悩みの場合は、一度ご相談いただければ幸いです。