Tel / 06-6338-2205

ごんどう法律事務所

御堂筋線江坂駅徒歩4分。お気軽にご相談下さい。

お知らせ

2018-11-10 14:48:00

最近相談を受ける中で感じたことを少し書きたいと思います。

 

タイトルの通り、我々弁護士は、依頼者の希望を「法律で」実現することを主たる職務内容としています。

典型的には訴訟や執行などのいわゆる「裁判」といわれるものがこれに当たります。

世の中のあらゆる法律上の紛争は、最終的に裁判所のみが解決する権限を有しています。市役所でも法務局でもありません。

そして、裁判官は法律と事実のみに基づいて判断をします。多少の人情味を垣間見せることはありますが、あくまで法律が与えた裁量の範囲内のことであり、その意味では厳然と法律に縛られているわけです。

このうち、後者の「事実」とは何かについて語ると話が長くなってしまうので、前者の法律について少しお話します。

 

法律によって依頼者の希望を叶えるという場合、当然ながら法律に規定されているメニューしか実現はできません。

・金銭の給付を受ける・動産を引き渡してもらう・登記名義を変えてもらう・離婚してもらう・親権者を決めてもらう・不動産を明け渡してもらう・債務がないことを確認してもらう・労働者としての地位を認めてもらう・所有権を確認してもらう・財産管理人を選任してもらう・・・等々、いろいろと法律に書いてあります。

弁護士としては、これらの方法によって裁判所が依頼者の希望を叶えてくれるように活動をするわけです。

裁判以前の交渉やADRの段階であっても、こじれたら最終的には裁判により実現するほかないため、上記のメニューを念頭に置いて活動します。

 

ところが、ご相談を聞くうちに、どうやら相談者の希望は法律では叶えられそうにない、とわかることがたまにあります。

その場合、残念ながら弁護士としては、丁寧に説明をしたうえでお引き取りいただくほかありません。

①例えば、これまで色々とひどい対応をしてきた相手方に対して、直接の謝罪を求めたいという場合、これを直ちに受任することはできません。

名誉毀損の事案であれば、名誉回復のための措置を法律上請求することはできますが、そうでない場合、法律は相手方に謝罪をさせるというメニューを用意していないのです。

もちろん、金銭問題を含む交渉の中で謝罪を引き出すことは戦略としてあり得ますが、相手方が拒否する場合に謝罪を強制する手段はありません。

②また、それと似たような状況で、「相手方を刑事で訴えたい」という希望もまれに聞きます。

法律上の問題が大きく民事(行政含む)と刑事に分かれることは誰もが知るところですが、刑事事件についてどのように手続が進むかについては、一般にはそこまで詳しく知られていないと思います。

誤解を恐れずに言えば、刑事事件としてどのように処理するかは全て警察・検察の捜査機関が決めることで、被害者や告発人等の関係者の意向は参考に過ぎない、ということです。

「嘘をついたから詐欺だ」「嘘を書いてたから文書偽造だ」「ひどいことを言われたから名誉毀損だ」と告発したいお気持ちは察しますが、警察・検察には刑事処分につきある程度の内部的基準があり、それに該当しない限りは送検・起訴という処分はされません。証拠がなければ尚更です。

もちろん、告訴状・告発状の作成を依頼されれば応じることは可能ですが、上記の通り処分権限は全て捜査機関にあり、(検察審査会を除いて)それに異議を述べる制度はありません。

③そのほか、「親と縁を切りたい」、逆に「子供を勘当したい」や、「次男には絶対に相続させたくない」という、家族関係の相談事も多いですが、左記はいずれもストレートには実現できません。夫婦関係は切れますが、親子関係や兄弟姉妹関係を切ることはできません(特別養子縁組を除いて)。法律がそのようなメニューを用意してないからです。

また、推定相続人に遺留分を放棄してもらうことは可能ですが、放棄してくれるかどうかは推定相続人次第です。

④余談ですが、「方法は何でもいいからとにかく相手方を懲らしめたい」という希望にはもちろんお応えできません。

弁護士はあくまで法律上正当な利益を実現するために強力な権限と法律事務の独占を許されており、社会的正義に反する要請には応じられないのです。

 

他にも枚挙に暇がありませんが、法律では実現できない希望は少なくないです。というより、世の中の争いごとのうち、法律で解決できる問題というのはほんのわずかかも知れません。そのあたりをご理解いただけると弁護士としては助かるところです。

少し愚痴混じりの長文になってしまいましたが、次に機会があれば、「事実」とは何かについて書こうと思います。